下垂体のご病気

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下垂体(脳下垂体)とは

多様なホルモンを分泌する内分泌器官

脳の底のやや前方には、視床下部(ししょうかぶ)とよばれる神経細胞の集まり(神経核)があります。
下垂体はこの視床下部にぶら下がったように位置し、脳の底をおおう骨(蝶形骨)の凹みに収まっています。

下垂体は、下垂体前葉と下垂体後葉という2つに分かれています。単純に部位で分類されているわけではなく、それぞれ別の役割をもっており、発生の起源も異なります。

下垂体前葉の役割

視床下部から分泌されるホルモンの刺激をうけ、成長ホルモンやプロラクチンとよばれるホルモンを分泌します。

成長ホルモンは体の成長や代謝の調整を担うホルモンです。プロラクチンは「乳腺刺激ホルモン」ともよばれ、乳腺の発達を担う役割があります。

それ以外にも、副腎皮質刺激ホルモンや卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンなど、それぞれ標的となる内分泌腺を刺激してホルモンの分泌を促す働きをもっています。臓器を直接刺激するホルモンもあります。

下垂体後葉の役割

下垂体ホルモンは、視床下部の神経核で作られ、神経の軸索(神経細胞から伸びる突起)を通って下垂体後葉に送られます。下垂体後葉は、これらのホルモンを貯蔵し、必要なときにホルモンを放出する役割を担います。そのため、ホルモン自体は作りません。

生成される下垂体ホルモンには、体液の浸透圧を調節するバソプレシンや、乳腺の筋線維を収縮させて乳汁を放出させる役割をもつオキシトシンがあります。オキシトシンは、分娩時に母体の子宮を収縮させて、子宮口を広げることで出産を促す重要な役割もあります。

下垂体のご病気は大きく分けて2つ

下垂体ホルモンに関連するご病気は、ホルモンの多寡により、以下の2つのご病状に分類されます。

  1. ホルモン分泌が不足することで起こる病気
  2. ホルモンが多すぎることで起こる病気

また、下垂体ホルモンの不足が1つに限定されるご病状もあれば、発症時から複数のホルモン不足を認める場合、
ないしは、ご病状が進行する過程で、不足するホルモンが増えていってしまうご病状も認められます。

その中でも、比較的ご相談の多い

• 下垂体機能低下症
• ホルモン過剰の原因となる下垂体腫瘍

をご紹介します。

下垂体機能低下症

下垂体機能低下症とは

下垂体からはさまざまなホルモンが分泌されます。

下垂体機能低下症とは、1種類以上の下垂体ホルモンの不足によって、下垂体の機能が低下する病気です。

下垂体ホルモンの種類と症状

下垂体機能低下症は、不足するホルモンの種類によって、その症状が異なるという特徴があります。

下垂体前葉ホルモン
  • 成長ホルモンの不足(下垂体性成長ホルモン分泌不全症;成人発症成長ホルモン分泌不全症)
    成長ホルモンの分泌が低下すると、子どもの成長状態が悪くなるほか、大人では体脂肪の増加や筋力低下などの症状が出る場合があります。
  • 甲状腺刺激ホルモンの不足(下垂体性甲状腺機能低下症)
    甲状腺刺激ホルモンが不足してしまうと、冷え性や体重増加、皮膚の乾燥などの症状が起こります。
  • 副腎皮質刺激ホルモンの不足(下垂体性副腎皮質機能低下症)
    副腎皮質刺激ホルモンが低下してしまうと、副腎不全などの深刻な状態に陥る場合があります。
    また、食欲不振、体重の減少、重度の倦怠感といった症状が現れます。
  • 卵胞刺激ホルモンの不足(下垂体性性腺機能低下症)
    二次性徴や生殖器の発達、性欲に関わるホルモンです。
    減少すると女性の場合では無月経や不妊などの症状、男性の場合では性欲低下や勃起障害が起こる場合があります。
  • 黄体化の各ホルモンの不足(下垂体性性腺機能低下症)
    卵巣刺激ホルモンと同様に、ホルモン分泌の不足は、二次性徴や生殖器の発達に影響を及ぼします。
  • プロラクチン不足
    プロラクチンは乳腺の発達や、乳汁の産生に関わるホルモンで、減少してしまうと母乳の量が減ったり、出なくなったりすることがあります。
下垂体後葉ホルモン
  • バソプレシン/抗利尿ホルモンの不足(中枢性尿崩症)
    ホルモンの不足が起こると、体液の浸透圧を調整する機能に異常が起こります。
    尿量が増え、のどが渇き、たくさんの水分を摂取するようになります。

ホルモン過剰の原因となる下垂体腫瘍

下垂体腫瘍の種類

  • プロラクチノーマ
    プロラクチン産生下垂体腫瘍とも呼ばれます。
    下垂体ホルモンが過剰となるご病状の中では、頻度としては最も多い病態です。
  • クッシング病(下垂体性クッシング症候群)
    副腎皮質ホルモンであるコルチゾールが過剰になって起こる病態です。
    高血圧症や肥満、糖尿病の隠れた原因となります。
  • 先端巨大症(下垂体性巨人症)
    成長ホルモンの分泌が過剰となり、細胞増殖が亢進する病気です。
    こちらも、高血圧症や肥満、糖尿病にくわえて、がんの隠れた原因にもなり、見逃し症例が多いと考えられております。

上記の病態の他にも、

  • 非機能性下垂体腫瘍
    ホルモンを分泌していない下垂体腫瘍で、下垂体腺腫の中の30-35%を占めます。
  • 下垂体炎
    下垂体にリンパ球などの細胞が浸潤して炎症が起こる病気です。
    炎症が起こると下垂体組織が破壊されて、機能が低下する場合があります。
  • ラトケ嚢胞(のうほう)
    体の中に生じた病的な袋状のもの嚢胞(のうほう)といいます。
    ラトケ嚢胞は、脳下垂体にできる袋状のできものです。
  • 胚細胞腫
    生殖細胞から発生する腫瘍です。厳密には下垂体自体ではなく、その周囲に発生します。
  • 頭蓋咽頭腫
    視床下部や脳下垂体、視神経などに接して発生する腫瘍です。
    こちらも厳密には下垂体自体ではなく、その周囲に発生します。

など

さまざまな下垂体腫瘍が存在します。

下垂体機能低下症の検査・診断

ホルモンの分泌量を確認

血液検査によって、各種ホルモンの血液濃度を測定します。そして、どのホルモンの分泌量が減少しているのかを確認していきます。

そのほかに尿中のホルモンを測定するため尿検査を行う場合や、複数の負荷試験が必要な場合もあリます。また、下垂体機能低下症の原因を特定するために、画像診断(CTやMRIなど)を行う場合もあります。

下垂体腫瘍の広がり具合などを確認

下垂体腺腫などの腫瘍が見られる症例では、腫瘍の広がり具合などを確認するため、さらに詳しい検査が必要になることもあります。

下垂体機能低下症の治療

不足しているホルモンを補充

検査の結果、不足しているホルモンが見受けられたら、そのホルモンを合成ホルモンで補充する治療が行われます。

副腎皮質刺激ホルモンが低下していれば、副腎皮質ホルモンを補充します。また、甲状腺刺激ホルモンの分泌が低下していれば甲状腺ホルモンを内服します。副腎皮質ホルモンと甲状腺刺激ホルモンは、年齢や性別を問わず、生命活動にはとても重要な役割を担うホルモンです。

また、成長ホルモンは、身長の伸びだけでなく筋肉や脂肪などにも影響を及ぼすため、不足している場合は成長ホルモンを補充する治療が行われます。黄体化ホルモンや卵胞刺激ホルモンの低下については、性ホルモンの内服、あるいは注射による補充が行われます。

不足しているホルモンを適切なタイミングで、かつ、適切な量を補うことで、本来の臓器機能やそのバランスが徐々に回復され、以前と同じ健康状態へ回復していくことが、大きな治療目標となります。

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